昨日はバスク地方にある3つ星レストラン、ムガリッツのソムリエとシェフによる授業だった
ムガリッツではどういう哲学に基づいてマリアージュをしているかなどがメインテーマ
まずムガリッツではマリアージュとは呼ばず"Armonía"=ハーモニーと呼ぶらしい
味が合うから、などといった枠を超えてコンセプトを一にする一品と飲み物(ワインに限らない)を常に研究しているとのこと
例えばマトンの皮+ヘレスのアモンティジャード→コンセプトは「屠殺」
アモンティジャードの、生物学的熟成から酸化熟成に切り替える過程でフロールを殺す様子が羊の屠殺と被るところからこのハーモニーに
あとは腐ったリンゴ(本当に腐っているわけではない)+ソーテルヌ→コンセプトは「視点の転換」
腐ったリンゴなんて食べられるわけない、という見た目からの先入観と、貴腐ワインのコンセプトが一致するということで
ちなみにこのリンゴとソーテルヌは実際に授業で実演してくれた
それから最近のプロジェクトだと化学的に同じ分子を持つワインと食べ物を合わせるとか
例えばアスパラガス+シャトーマルゴー+pirazina(ペラジン?)を含ませたナプキン
まずはお客さんにナプキンにペラジンを吹きかけてその香りを嗅いでもらって、それからお皿とワインを出すそう
こちらは料理は出なかったけど、シャトーマルゴーをテースティングさせてもらえた
授業の前にムガリッツではどんな料理を出しているかを見てみたのだが、なんじゃこりゃ?の連続
正直授業が終わってもあまりに前衛的すぎていつか行ってみたいという気持ちにはならなかった
まあその前に値段と敷居が高すぎてお呼びではないんだけどね…
そのほかのハーモニーだと、「飲み物を食べる」というプロジェクト
例えば黒オリーブの中に何かが入ったもの+ヴィンサント
オリーブの粒の上にワインをかけて、スプーンで一口で食べるというもの
ヴィンサントの甘味とオリーブの酸味がいい具合にマッチしていておいしかった
このヴィンサントもかなり入手困難なものらしく、これはお店に残っていた最後の1本をこの授業のために開けてくれたとのこと
5つ星ホテルのロビーみたいな優美な香水の香りがした
それからちょっと見えにくいけどこのバットに入っている白い物体は米と麹を混ぜて布のようにしたもの
これに合わせるのは隣で注いでくれている真澄の漆黒KUROという日本酒
ムガリッツでは日本酒にもかなりの力を入れているらしい
上記のマリアージュ以外にも一応ワインリストの用意はあるらしいが、やはりこれもムガリッツ流でワインの名前や銘柄は一切表記していない
このワインリストにはワインの名前ではなくこんなふうにイメージが7つほど載っているだけである
どんなワインが飲みたいか、お客さんはこれらの絵のなかから選んでソムリエにその絵に対してどんなイメージが浮かんだか伝える
ソムリエはそれを聞き取って、自分達のボデガにあるワインの中から最適と思われるワインをお客さんに紹介しながらお客さんがワインを選ぶお手伝いをするというもの
ソムリエの技量がめちゃくちゃ試されている
確かにほとんどのお客さんってワインに関する知識はないだろうし、銘柄だけが羅列されているワインリストを渡されても困惑するだけだろうからこの仕組みはかなり画期的かつ優れた案だと思った
ちなみに今回来てくれたソムリエは韓国出身で、韓国の大学を出て少し働いた後自力でムガリッツのソムリエまでたどり着いたというから本当に尊敬
しかも日本のドラマで学んだという日本語も普通の会話は問題なくできて、学校で始めて日本語を使えたことにさらに感動した
労働ビザの件とかでめちゃくちゃ苦労したらしく(そりゃそうだよなあ)、もし何かそういった面で困ったらいつでも連絡して!と名刺まで渡してくれた